悪質化する食品偽装
食品産業にとって、信用に関わる大きな偽装問題が、長期にわたって注目されています。 しかも、年々悪質になっているような感じさえします。近年の偽装問題を見てみましょう。
偽装を招くもの
メーカー側のモラルを問う意見が主流となっていますが、これは氷山の一角であり、 また、探っていくと原因はそれだけではないようです。
(1)小売業者の都合
デパートやスーパーでは消費者からの苦情を恐れて、メーカーに賞味期限を極端に短く設定させます。 そして賞味期限が近づけば、その食品をメーカーに返品することでリスクを避けようという考えです。 メーカーや問屋に圧力をかけて、非常識な納入期限を設定したり、 欠品の場合はその分の売り上げを補償させることも。
(2)メーカーの「もったいないパラダイム」
2000年の雪印乳業集団食中毒事件の例。
現場では酪農家が生産した生乳をとても大切に扱っていて、 無駄にしては申し訳ないという意味での「もったいない」が徹底していた(利益優先主義ではない)。 これに加えて、殺菌を徹底することが安全につながるという過信により、 「殺菌すれば大丈夫」と汚染された生乳を使い、食中毒に。
(3)消費者の都合
いつでも安く買えて、保存料無添加で国内産の新鮮な食品が欲しい!―― 近年の偽装によって、消費者の意識は変わりつつあります。
しかし、大量に安く輸入された食品に頼っていたこれまでと違って、 自給率の低い日本では、国産品はけっこう割高になります。
割高なものでも、安心で安全なものが良いという消費者も増えていますが、 全員がそういうわけにはいきません。
不景気の影響で家計をやりくりする為には、原材料や単価を抑え、 日持ちをよくする添加物が利用された安い食品も、選択せざるを得ない、というのが現実です。
(4)複雑な流通経路
三笠フーズの汚染米の例。

消費者の口に入るまで、沢山の業者が間に入っています。 介在するごとに通常の米よりもかなり値段の安い汚染米の値段が上がり、 最終的には新米とほとんど同じくらいに値段が上がるのです。 消費者の目からは生産者の顔は見えようがありません。
(5)投資ファンドの思惑
ポッカの「レモン果汁」の例。
「防カビ剤は不使用」の表示を変更しないまま、 防カビ剤「イマザリル」が混入していたレモン果汁を販売。 これはアドバンテッジファンドがポッカの実権を握った後に、発生しました。 ファンド側が利益至上主義に走り、食の安全や公正な表示を後回しにした懸念があるようです。
(6)複雑な法律
食品には管轄官庁が多くあります。
- (農林水産省)生鮮食品の原産地を取り締まる「JAS法」
- (厚生労働省)添加物を取り締まる「食品衛生法」
- (経済産業省)「不正競争防止法」
- (公正取引委員会)「景品表示法」
これら4つの法律の間で見逃されてきたケースなどもあり、 今の法体系では食品偽装が十分に防げないという死角も、指摘されています。
食品は最終的には「人が口にするもの」でありながら、いろいろな思惑の中で、 そのベクトルはバラバラな方向を向いているようです。
デパートやスーパーのテナントは、賞味期限が近づいたら廃棄するよう指導され、 不条理に感じながらもどうする事もできない。 また逆に、テナント側は廃棄分も考えて価格設定をしなければならず、 結局、消費者も無駄な部分にまでお金を支払っているのが現実です。
全体が満足できるような食品生産は、どうすれば可能になるのでしょうか。 ことに近年は、医薬品への過度の依存を見直し、「医食同源」的考え方から食品への期待が高まり、 介護患者向け食品の市場等が拡大しています。 言わば「安心」と「安全」を売る食品へのニーズの高まりは、 メーカーや小売業者にとっても、会社存続の糸口になるのではないでしょうか。
本当に捨てるの?! もったいない
賞味期限が過ぎれば、絶対に口にはできないのか?
これについては、次のような取り組みがあります。
●モランボンが出荷した肉まんの例

表示よりも8グラム程度、量が少なかった。
監督機関の東京計量検定所は
「法に直接回収義務の規定はないが、内容量に誤りがあると分かった以上、販売はできない」
と、32万個が回収され廃棄処分に。
重さの偽装だけで食べられるものであれば、大安売りとかの対処はできないの?という事例です。 しかし、企業は健康への影響はなくても、 黙っていると内部通報で隠していたように思われてはいけない、と発表して回収します。
世界中で、貧困のため食事に困っていたり、餓死する人も沢山いる中で、 残念なことに日本は食べ物を捨てる量が異常に多い国との指摘があります。
●日本の食品廃棄処分量 「平成19年 環境・循環型社会白書」
- 2004年度における食品廃棄物の発生量は1,939万トン
- このうち産業廃棄物(食品製造業から発生)が339万トン、一般廃棄物(一般家庭や食品流通業、外食産業などから発生)が1,600万トン
- このうち、24%の460万トンが肥料や飼料などにリサイクル、全体の76%は焼却や埋立て処分に
廃棄食品活用の動き
廃棄される食品を生かそうという取り組みがあります。 廃棄される食品を経済的に困っている人に再分配して消費しようというものです。
大切ないのち=食べ物
家庭での調理が大半を占めていたかつてと違い、外で調理されたものがそのまま食卓に並ぶ時代になりました。 コンビニやスーパーに行きお金さえ出せば、すぐに食べられるものが24時間いつもで手に入ります。 しかし、本当に大切な事を私たちは忘れているのではないでしょうか? そこで、一つ考えていただきたいのです。
私たちにとって食べ物とは一体、何なのでしょう。
私たちは何のために食事を取るのでしょうか?
人が口に入れるもの、それはすべて命あるものから出来ています。 肉も魚も野菜も、加工食品もすべては、その食品によって人のいのちを生かすものなのです。 あまりにも便利になりすぎて、食品が「食べる品物」と化しているような感さえあります。 しかし、食事は「物」ではないのです。
そして、すべての人が食事をしなければ生きていけません。 偽装した人も、偽装によって騙された人も、生産者も製造者も消費者も流通業者もです。 私たちの大切ないのちの為にいただく、大切な命、それが食べ物です。 食べ物は、食べた人の命を養います。 それは肉体的なものだけでなく、心も魂をも養うのです。 心のこもったおいしい料理が豊かさを生み出すようにです。
そういった意味では、食品を扱う産業界は誇りある尊い役割を担っているといえるのではないでしょうか。 しかし、現実はほど遠い状態といえます。いのちあるものを粗末にしている国が社会が会社が、 これから本当に栄えていくと断言できるのでしょうか?

食事の時に「いただきます、ごちそうさま」と言うように
- いのちを捧げてくれている食べ物に感謝する
- 農家や漁師さんに感謝する
- 食べ物を加工してくださった人に感謝する
- 食べ物を料理してくださった人に感謝する
- 食べさせていただけることに感謝する
こういった想いをすべての人が共有していれば、 食品を偽装するなどということはできないのではないでしょうか?
今後、ますます食品に対する「安全」と「安心」は求められていくに違い有りません。 食品の本質に目を向けていくこと。それが解決策になると言えるのではないでしょうか?